5月10日_EBC18日目 レジェンドが久々の再会_豪太日記

On 2013年5月10日 by dolphins

[行動概要]
プモリC1(5900m)→BC(5300m)

6:00 起床
7:15 朝食
9:00 プモリC1→BC出発
12:20 メスナーとベースキャンプで出会う
13:30 昼食
18:00 夕食

・食事
朝食:山菜おこわ(アルファ米)、お味噌汁
昼食:ピザ、ポテト
夕食:ダル、シェルパ風スープ

・天気
午前中晴れ 午後やや風強い
朝-10℃、昼12℃

 

プモリC1のバケーションも今日で終わり。

朝早くからベースキャンプよりキッチンボーイ達が登ってきて、僕達の荷物をたたんでくれた。

エベレストを見ると無風快晴。今日こそは登頂のチャンスだろう。
望遠鏡を借りてみると、南峰に5~6人の人影が。そこを過ぎるとヒラリーステップ、そしてその先には山頂がある。
倉岡さんの持っているトランシーバーから現在のルート工作の状況がラッセルブライス隊から入ってくる。

倉岡さんはいつもラッセルブライス隊の周波数に合わせているのだ。そのやりとりを聴くと、南峰まで来たがロープが足りない…ロープ待ちだそうだ。そうこうしていると、「風が強くなってきた」とシェルパの通信。

プモリC1はいまだに風がないが、南峰では風が強いのだろう。8000mの標高で風が強くてロープ待ちは想像を絶するほど辛いはずだ。
そんな様子が耳にはいってくるから、今日のルート工作はそこまでかと思っていた。

僕達も荷物をたたみベースキャンプに降り始める。11時50分、唐突に倉岡さんのトランシーバーに、
「Reached Summit!!」
という声が聞こえた。

シェルパ達は辛抱強くルート工作をしながらついに今日エベレストの山頂に立ったのだ!
今シーズン初めてのエベレスト登頂である。自分のことのように嬉しくなった。

これで頂上までルートがつながったことになる。

 

プモリ下山中、ベースキャンプの入り口近くでそのニュースを聞いたすぐあとに、今度はサーダーのペンバギャルツェンのトランシーバーから五十嵐さんの声が聞こえた。

五十嵐さんは、
「先ほど平出君と会ったら、ちょうどメスナーと出会い、ぜひお父さんと話をしたいから、至急ベースキャンプエアポートに来てほしい」
とのことだった。

ベースキャンプエアポートとは、ベースキャンプから離着陸するヘリコプターのヘリポートのこと。
どうやら、先ほどきたヘリコプターに乗ってメスナーがEBCに来たようだ。

メスナーとは勿論、ラインホルト・ メスナーのこと。

エベレストを最初に無酸素で登頂したほか、8000m峰14座すべてを独自のバリエーションルートで登頂した、世界的な生粋の登山家だ。

父とはお互い冒険家としてリスペクトしつつ、30年前に日本で行われた冒険家の世界サミットで出会った以降、登山と冒険の歴史のなかそれぞれの想いを分かちあってきていた。
その知らせを聞くや、父はこれまで見せたことのないようなスピードでベースキャンプをを駆け抜けていった。すると、メスナーその人も嬉しそうに父に向かって歩いてきた。

 

彼は今年、エベレスト登頂60周年を記念して来ているそうだが、直接ヘリコプターでベースキャンプを訪れたため高度順化はしていないそうだ。
しかしさすがはメスナー、そんなことは動じもせずお父さんとの再会を祝った。
父とメスナーが話をしていると、すぐに周りは多くの人だかりとなった。様々な国籍の人々が、皆、父とメスナーのツーショットに驚き、カメラを構えている。

最後にメスナーはお父さんに、
「あなたを見ていると、エベレストを登るためのパワーと頭脳を備えているのがよくわかる、きっと成功するだろう」
と告げ、硬い握手を結んで別れた。

メスナーはこれからまたヘリコプターでカトマンズに降りるのだそうだ。
 

メスナーと別れてすぐに、今度は今シーズン、ルート工作をめぐりC2にてシェルパと乱闘事件となった、世界的登山家のシモーネと出会った。

シモーネは先鋭登山家であると同時にヘリコプターパイロットでもある。先日シェルパとのごたごたがあったが、それでもなかなかパイロット兼登山家という人に出会うことはめったにない。
エベレストベースキャンプというのはやはり特別な人々を惹きつけるなにかがあるようだ。

 


≫エベレスト・レジェンドの二人「メスナー&三浦雄一郎」